小売店のインバウンド対策｜訪日外国人に選ばれる集客戦略と実践方法

自店舗は訪日外国人のお客さんに「選ばれるお店」になっていますか？
小売店がインバウンド需要を取り込むためには、言語対応やSNS活用、決済手段の整備など実践的な対策が欠かせません。
本記事では、今すぐできる集客戦略をくわしく解説します。

なぜ今、小売店のインバウンド対策が必要なのか？

訪日外国人観光客が再び増加し、小売店にとっては新たな商機が到来しています。
現在の動向を把握し、的確な対策を講じることで、外国人旅行者の来店を促進できます。

訪日外国人市場の動向と消費額データ

小売店がインバウンド対策を急ぐべき理由の1つは、訪日外国人市場の回復傾向にあります。
日本政府観光局（JNTO）の発表によると、2024年には訪日外国人数がコロナ前の水準に近づき、月間300万人を超える月も確認されています。
特にアジア圏からの観光客は特に多く、さらに一人あたりの消費額も高い傾向があります。

観光庁のデータでは、2023年の訪日外国人一人あたりの旅行支出は約20万円に達しており、そのうち3割以上が「買い物」に使われていると報告されています。
これらの統計から、小売業界にとって訪日外国人が非常に重要な消費層であることが読み取れます。

また、近年はSNSやレビューサイトの影響で、購買行動が事前の情報収集に左右されやすくなっています。そのため、ただ店舗を構えているだけでは、集客にはつながりません。

正確な市場動向と訪日外国人の消費行動を踏まえた戦略を立てることが、インバウンド集客で成果を出す鍵となります。今後さらに拡大が見込まれるインバウンド需要を取り込むためにも、早めに対策を講じておきましょう。

インバウンド対応をすることで得られるメリット

小売店がインバウンド対応を行うと、直接的な売上向上だけでなく、中長期的な店舗のブランディングにもつながります。具体的には、訪日外国人の満足度が上がることで、クチコミやSNSでの拡散が期待でき、次の来店者につながる好循環が生まれます。

さらに、多言語対応やキャッシュレス決済の導入により、外国人客だけでなく日本人顧客にとっても利便性が高まります。そして、店舗のサービス品質が全体的に高まり、競合との差別化が図れます。

また、訪日外国人の消費は「一時的な需要」ではなく「継続的な市場」として注目されています。国や自治体による補助金制度も整備されつつあるため、初期投資の負担を抑えながら対策を始められる環境が整っています。

インバウンド対応は単なる一時的な流行ではなく、小売店の成長戦略の一部として非常に有効です。今こそ積極的に取り組むべきタイミングだといえるでしょう。

訪日外国人観光客はどのようにしてお店を探しているのか？

訪日外国人が日本で買い物をする際、どのような情報源を頼りに店舗を選んでいるかを理解することは、集客の鍵を握る重要なポイントです。多様化する情報収集手段のなかでも、信頼性の高い媒体への対応が求められています。

Googleマップ検索（MEO）

訪日外国人が店舗を探す手段として、Googleマップの活用が急増しています。特に目的地の近くで「drug store near me」や「souvenir shop in Osaka」と検索されることが多いため、地図上の情報の正確さと魅力が集客に直結します。

しかし、Googleビジネスプロフィールの内容が最新でなかったり、外国語に対応していなかったりすると、来店の機会を逃すおそれがあります。
そこで、MEO対策を強化することで、検索上位に表示される確率が上がり、訪日外国人の目に留まりやすくなります。さらに、営業時間や商品の品揃え、写真などを充実させることで、来店前の安心感と期待値を高められます。

店舗の位置や評価が一目でわかるGoogleマップは、現地での店舗選びや訪問先の決定を助ける非常に有効なツールです。そのため、MEO対策はインバウンド集客において欠かせない施策となっています。

SNS・クチコミサイト

SNSやクチコミサイトも、訪日外国人の店舗選びに大きな影響を与えています。特に、InstagramやYouTubeで発信される日本旅行の投稿を見て、実際に紹介された店に足を運ぶ観光客は少なくありません。

また、TripadvisorやGoogleのクチコミ欄で高評価を得ている店は信頼性が高いと判断され、選ばれる傾向があります。店舗の魅力を視覚的に伝える写真や動画、実際の体験談は、言葉の壁を越えて来店意欲を喚起します。
特にSNSはリアルタイム性が高く、最新の店舗情報を即座に発信できる強みがあります。定期的な情報発信とユーザーとの交流を続けることで、ファンの獲得と信頼の蓄積が可能です。

SNSとクチコミ対策は、訪日外国人の集客につながる大切な情報発信と信頼形成のポイントです。

宿泊施設・ガイドブックの影響

観光客の動線に大きく関わるのが、宿泊施設やガイドブックの情報です。
ホテルやゲストハウスでは、周辺のおすすめ店舗をフロントで紹介することがほとんどです。
このとき、スタッフが薦めやすい情報を事前に提供しておくことで、推薦リストに加えてもらえる可能性が高まります。

また、紙のガイドブックやWebマガジンなどに掲載されることで、信頼感と来店動機を同時に高められます。

訪日外国人の中には、旅行前にガイドブックを購入して綿密に計画を立てる人も多く、事前の情報露出が来店に直結することも少なくありません。宿泊施設との連携やガイド媒体への掲載は、短期間で大きな成果につながる可能性を秘めています。

インバウンド施策をより強化したい場合には、こうしたオフラインとオンラインの接点も活用することが重要です。

小売店が実施すべきインバウンド対策

訪日外国人を集客するためには、小売店ならではの戦略と対応が欠かせません。現場で実行可能かつ効果的な対策を講じることで、訪日外国人の満足度と売上の向上が期待できます。

Googleマップ・MEO対策

訪日外国人は、旅先での買い物先をGoogleマップで検索する傾向があります。そのため、小売店はGoogleマップ上に店舗情報を正確に掲載し、MEO対策を行う必要があります。
MEOとは「Map Engine Optimization（マップエンジン最適化）」の略で、Googleマップ検索で店舗が上位表示されるようにし、さらなる集客につなげる施策を指します。

営業時間や定休日、住所、電話番号、取扱商品などの基本情報は常に最新の状態に保ち、外国語でも記載することが重要です。
加えて、店内の様子や商品の写真を充実させることで、観光客に安心感と来店意欲を与えることができます。

Googleのクチコミへの返信も信頼性を高める要素となり、集客効果の向上につながります。地図検索の段階で選ばれる存在になるためには、こうしたMEO対策が欠かせません。

免税・決済・多言語対応

訪日外国人にとって、買い物のしやすさは店舗選びの大きな基準です。免税対応を行うことで、海外からの観光客にとって魅力的な価格で商品を提供でき、購入意欲を高めることが可能です。

また、AlipayやWeChat Pay、銀聯カードなど、海外の主要な決済手段に対応することで、レジ前での不安やストレスを軽減できます。スムーズな決済環境は、再来店やクチコミ拡散にもつながります。

さらに、多言語での接客や表示の整備も欠かせません。商品ポップや店内掲示物、メニュー表示などを英語や中国語で用意することで、言語の壁を感じさせずに買い物を楽しんでもらえます。

こうした配慮が店舗への信頼につながり、訪日外国人から選ばれる理由となるでしょう。

SNS活用・クチコミ施策

インバウンド集客において、SNSやクチコミの影響力は非常に大きなものとなっています。

店舗の公式InstagramやFacebookなどを活用して、商品やサービスの魅力を定期的に発信することが重要です。特に訪日外国人向けには、写真や動画を中心に構成することで、言語に頼らず情報を伝えられます。

また、過去に来店した顧客がSNSに投稿してくれた内容をシェアしたり、GoogleマップやTripadvisorなどに寄せられたクチコミに丁寧に外国語で返信したりすることで、信頼を高められます。

さらに、来店客にクチコミ投稿を促す仕組みを設けるのも有効です。SNSとクチコミは、小売店が“訪れる理由”と“選ばれる理由”を生み出すために欠かせないツールです。地道な運用がブランド力を高め、集客の基盤を作ることにつながります。

インバウンド対策を行う上での費用感・使える補助金・注意点

インバウンド対策を始めるにあたって、どれくらいの費用がかかるのか、そして費用を抑える方法はあるのかを知ることが重要です。無理のない予算内で効果的な施策を実行するために、事前の情報収集と慎重な計画が求められます。

かかるコストと補助金活用

インバウンド対策に必要な費用は、対策の範囲や店舗の規模によって異なります。
たとえば、GoogleマップやGoogleビジネスプロフィールの整備だけであれば、自力で対応して費用を抑えることが可能です。

一方で、プロにMEO対策を依頼した場合は、月額3万円〜5万円程度の費用がかかるケースもあります。さらに、免税対応の登録手続きや決済端末の導入、多言語表記の整備などを一度に行うと、初期費用として10万円〜30万円を要する可能性もあるため、事前に見積もりを取ることが大切です。

しかし、こうした費用を軽減するために活用できる補助金制度も用意されています。

国や自治体が実施している「観光需要喚起補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などは、インバウンド対応設備の導入費や広報費の一部を支援してくれます。
申請には計画書の提出や条件の確認が必要ですが、適切に活用することで、初期投資の負担を大きく軽減できます。

コストをかけるべき部分と、補助金を活用できる部分を見極めることが、成功への第一歩です。

失敗事例から学ぶ注意ポイント

インバウンド対策に取り組んだものの、十分な成果を得られなかったという声も少なくありません。よくある失敗の1つに「設備は整えたが、実際の運用がされていない」というケースがあります。

たとえば、多言語の案内表示を設置したものの、スタッフが外国語に対応できず、かえって混乱を招いてしまったという事例があります。

また、SNSアカウントを開設しただけで満足してしまい、更新が止まったというケースもあります。
一方的な情報発信ではなく、顧客との対話を意識した継続的な運用が求められます。さらに、補助金を受けて設備を導入したものの、実際の来店数につながらず、費用対効果を感じられなかったという声もあります。

このような結果を防ぐためには、事前のターゲット分析や実施後の効果測定を欠かさず行うことが重要です。
計画性と継続性を持った対応こそが、インバウンド対策を成功に導く鍵です。

まとめ

インバウンド対策は、小売店が今後も安定した集客を続けるために欠かせない施策です。MEO対策をはじめ、多言語対応や免税、SNS活用などを段階的に進めることで、訪日外国人の来店率や満足度を高めることができます。

また、補助金も活用しながら継続的に取り組みましょう。